vol.18
芳木麻里絵
YOSHIKI MARIE
菓子模様/星をみる
鹿児島生まれの現代版画家・芳木麻里絵の鹿児島初個展。何百回も刷り重ねることでできる立体的な版画表現は唯一無二の表現であり、二次元の世界を三次元化。天体のイメージを火山灰を用いた特殊なインクで刷り重ねたり、100年前の和菓子の見本帳からカラフルな和菓子を版画で再現したり、版画を「超える」世界を表出します。
- 展示期間
- 2023/04/08 (Sat) - 2023/05/07 (Sun)
Saturday,April 08,2023 - Sunday,May 07,2023
Profile
プロフィール
芳木麻里絵
芳木麻里絵 YOSHIKI Marie
美術作家、鹿児島市生まれ。京都市在住。
2006年 京都精華大学芸術学部造形学科版画コース卒業
2008年 京都市立芸術大学美術研究科修士課程 終了
写真画像の中にある「光の陰影」「被写界深度によるボケ」「記憶の中の質感を想起させる表層」など
をキーワードに、」版画技法の一つであるシルクスクリーン技法を用い、数百回のインクの層を重ね、
立体的な作品を生み出す制作方法をとる。主な展覧会に「MESSAGE2017 南九州の現代作家たち」
(都城市立美術館・宮崎)、個展「析出する光」(奈義町現代美術館・岡山)、「フロム・・エッジー
80年代生まれの作家たち」(鹿児島市立美術館・鹿児島)、「越後妻有大地の芸術祭2022」(新潟)など。
Other works
他作品
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菓子模様_春
菓子模様 (和菓子木版見本帳)
100年以上前に発行された木版で摺られた和菓子見本帳をもとに作品を制作しました。和菓子見本帳は300年前から存在し、お客様への商品説明、そして菓子意匠を伝え残す為の貴重な史料です。当初は手描きの見本帳でしたが、木版印刷が発展したことにより明治以降昭和初期までは、木版で摺られるようになりました。見本帳に見られる木版画得意のぼかし表現、手摺による摺圧の加減によるエンボス、和紙に顔料絵の具を含ませながら摺る事による特有の粒子感など、木版画技術による和菓子表現の豊かさに目を奪われ、100年以上前とは思えないポップな色使いやデザインに驚かされました。
この見本帳を元に当時の菓子職人も和菓子作りをされていたことに想いを馳せながら、何百層も刷り重ねて厚みの出る方法に加え、透過性のあるインクを用い、アクリル板の裏と面から擦り重ねることで、木版特有の表現をシルクスクリーン技法を用いて再解釈しています。 -
星をみる
星をみる(天体写真)
私たち人類は、いつの世にも星空をながめ、その美しさに感動し、その光の先にある宇宙の真実を探求してきました。
星は季節の巡りを知らせ、暗闇の中でも向かう先を示し、そして死んだのちに帰っていく信仰の対象でもあります。
1609 年ガリレオガリレイが望遠鏡による天体観測を始めた事で、宇宙はより身近なものとなり、私たちは星について多くのことを知ることになりました。いまでは数多の人工衛星や宇宙探査機から送られてくる天体写真は、光の粒でしかなたっか星々の美しい姿を私たちに教えてくれます。しかしそうして真の姿を現したかのような星の姿も、実はさまざまなフィルターを通して可視化され、着色されたイメージでしかありません。決して現実には存在しないイメージ。しかし私たちはそれはリアルだと思いながら眺めています。
本作では、二次元の中にしか存在しえない天体写真に奥行きを与え、現実の中にイメージを析出させることを試みました。
その際に火山灰を練り込んだ特殊なインクでイメージを刷り重ねました。火山灰は厳密には灰ではなく、地球という天体の奥深くでいままさに生成された微細な鉱物たちです。宇宙的なスケールと私たちの生をつなぐ火山灰の質感は、何光年という距離の隔たりの先にある星たちの確かな存在を析出させてはくれないでしょうか。